アンケート調査などで多くの人に質問を行い,その結果を集計すると,多くの場合,何らかのデータが得られます.それらのデータは表やグラフ,あるいは図などの表現を伴って我々の前に現れます.調査に不正・虚偽回答がないと仮定した場合,そのデータは100%「事実」を伝えるものになります.すなわち,「○○について××さん,△△さんらXX人に質問した結果,◎◎という結果が得られた」という「事実」は間違いではありません.しかし,その「事実」をどう解釈するのか.そこには多くの「真実」に関する提案がなされる可能性があります.
このエントリは,後輩の日記「ささやかな抵抗」から仕入れたネタを元に,自分なりに「勝手に解釈」してみる試みです.書いてあることを鵜呑みにしたら負けですよ(笑.
ネットレイティングス株式会社-プレスリリース「≪データクロニクル2006・ファクトシート≫2000年から2006年の6年間でウェブ利用者の年齢構成に大きな変化 20代の構成比が半減、中高年齢層や10代は着実に増加」 2006年11月7日
上記資料の「図表1 ウェブ利用者全体の年齢構成比の推移 (2000年4月~2006年3月の月間データ、家庭のPCからのアクセス)」を取り上げてみます.
この図表を見ると,2000年4月から2006年3月にかけて,20歳代の構成比の劇的な減少が確認できます.30歳代は微減でしょうか.40, 50歳代および60歳以上は,微増しているようにも見えます.また,19歳以下の構成比も不安定ながら,微増がうかがえます.
この「事実」に対する,プレスリリース中での分析は以下の通りです.
弊社代表取締役社長兼チーフアナリストの萩原雅之は、「若い世代で先行していたウェブ利用は、この6年間で着実に中高年齢層に普及しています。また、同時に女性にも普及している様子が見て取れます。一方で、20歳代の比率が減少しているのは、ウェブ利用が全世代にわたり一般化したことによるものですが、携帯電話端末の機能やサービスが劇的に向上し、ECやSNSなどの携帯電話による利用増も要因と考えられます。」と述べています。
すなわち,このプレスリリースでは調査結果という「事実」から,「ウェブ利用が中高年層へ普及している」「20歳代の比率減少は携帯電話の利用増によるものである」という二つの「真実」を見いだしています.
さて,この結果に対して異なる見解(といっても矛盾しているわけではないですが)を持っている日記があります.
携帯ネット万能の世の中は、いつまでも続かない!んじゃないかな・・・ - Tech Mom from Silicon Valley
この日記を書いた方は,上記プレスリリースに対して次のような分析を行っています.
これってつまり、20代だけがパソコン離れしている、ということなんじゃ??
(snip)
その「真空状態」に、手軽な携帯ネットがはいりこんだので、今の20代は「携帯ネット世代」になった。でも、あと5年ぐらいすると、携帯も使うしパソコンも使う、という「マルチ世代」になるんじゃないか、そうすると「揺り戻し」があるんじゃないか、などと思うのだ。
「19歳以下の世代はパソコン離れしておらず,むしろパソコンと携帯を両方活用している」のではないか,というものです.
さて,これら合計3つの「真実」の提案について,「正しい」のはどれか?
ちなみに「全て正しい」「全て間違い」という選択肢もあり得ます.
ここから私個人の「推測」です.推測にとどまるのは,根拠を提示しないから.
私の推測としては,「ウェブ利用が中高年層へ普及している」「20歳代の比率減少は携帯電話の利用増によるものである」「19歳以下の世代はパソコン離れしておらず,むしろパソコンと携帯を両方活用している」のいずれについても疑問が残ります.疑問の理由は,調査結果で使われている「比率」という表現手法(といっていいのだろうか)です.
比率で表されるものは,「その要素が全体の中でどれだけの割合を占めるか」ということなので,絶対的な数の増加は不明です.比率が増加していても,絶対数は減少していることだってあり得ます.
たとえば,A社の新入社員数が以下の通りだったとします.
・2000年度 : 男500人,女500人.計1,000人
・2006年度 : 男100人,女300人,計300人
この場合,各年度における男女の比率は次の通りです.
・2000年度 : 男50%,女50%
・2006年度 : 男25%,女75%
比率「だけ」を見てみると,「2000年度から2006年度にかけて,新入社員の中で女の占める割合が増加した」ということが分かります.しかし,この「事実」から「A社は2000年度より2006年度の方が女を多く採用した」という「真実」を導くのは間違いになります.不景気か何か分かりませんが,A社は2000年度よりも2006年度の方が少なく採用しているのですから.
さて,元の議論に戻ると,データとして比率は提示されていますが,絶対数は提示されていません.すなわち,全体の中で中高年層の占める割合が増えたからといって,中高年層の利用者が増えたかどうかは不明のままです.20歳代も,パソコンを使う人数は増えていて,たまたま他の世代の伸び率が高かったために,相対的に比率が下がっただけかもしれません.
また,各世代の人口および人口比率は各調査時点で当然異なっていますので,そういった変数が与えた影響についても考慮に加える必要があります.
ちなみに,19歳以下の比率が増加している原因として,私は単に「以前よりもパソコンを使い始める年齢が下がってきたから」だと推測しています.むしろ携帯は関係ないくらいの勢いで.もちろん根拠はないから,思ったことを勝手に言っているだけですが.推測の理由は特にありません.2000年代という時代を生きてきた自分が見た,世界の断片から推測しているに過ぎません.
20歳代の比率が下がったのは,「20歳代は2000年時点ですでに多数がパソコンを利用しており,その現状は2006年になってもほぼ同じであったが,他の世代の傾向が変化した結果,相対的に占める比率が下がったに過ぎない」という分析の方が正しいような気がします.携帯も使っているけど,パソコンを使う人が減ったわけではないのではないかと.
本当は,プレスリリース末尾で紹介されているデータを購入してきちんと分析すべきなのでしょうが.面倒なのでパス(ぇ.っていうか,むっちゃくちゃ高いですね(汗.個人ではよっぽどのことがないと購入できないや….
まぁ,こんなに長々と書いて何が言いたかったかというと,「データを分析するときは細心の注意を払って多面的に見る必要がある」とか「他者が行った分析は絶対的に正しいとは限らないので,自分自身でその信憑性を考える,いわゆるクリティカル・シンキングが大切である」とか,そういうことです.あんまりそういうことを言っているような流れでないのはご愛敬.
なんか書いてて疲れた(笑.偉そうに書きましたが,自分も根拠ある仮説を提示しているわけでもないし,引用した方々の意見を否定しているわけではないですよ.なんとなーく眠い頭で感じたことをつらつらと書いてみただけです.
議論をふっかけられても,あんまり本格的に意見を述べられない気がするので,書き逃げ~(ぉ.